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実証実験レポート 新宿区災害対策本部訓練と連携

(2020.3.27 掲載)

ドローンを用いた災害時の避難者誘導で成果を上げる

新宿駅周辺防災対策協議会のメンバーであるチーム・新宿(※)は2016年度から継続的にドローンや情報通信機器を連携させた実証実験を実施しており、第四弾を2019年12月13日に実施しました。
いつ起こるとも知れない大規模地震を想定し、共助の訓練や地域の防災力の向上が急がれていますが、災害発生直後の情報収集・発信など課題も残ります。チーム・新宿では参加企業が日頃の業務のなかで蓄積・活用してきた技術・知恵・資源を結集して実験を実施しています。
今回の実証実験は四回目となり、初めて気象センサーを導入、また、同時に開催された新宿区災害対策本部訓練への情報提供を検証しました。

※ チーム新宿:損害保険ジャパン日本興亜株式会社、SOMPOリスクマネジメント株式会社、工学院大学、株式会社理経および新宿区の新宿駅周辺防災対策協議会のメンバーから構成。ドローンは損保ジャパン日本興亜株式会社提供。

実験の内容は?

今回の主な目的は、新宿駅周辺地域の被害状況の把握、滞留者誘導、新宿区災害対策本部との情報共有です。

新宿中央公園と芸能花伝舎の2拠点でドローンを飛行させ、撮影した映像は、新宿中央公園、工学院大学と新宿区役所の4.9GHz帯の長距離無線LANでつないだ複数拠点で情報を共有します。

災害時に避難所の一つとなる新宿中央公園で飛行させたドローンで撮影した映像を新宿区役所へ伝送し、災害対策本部長を務める区長がIP音声を利用して、「カメラを右に向けて」「新宿駅方面を映して」など、ドローンのパイロットに指示を出し、被害状況を把握する検証を行いました。エリアごとの被害状況がわかりやすいよう、一つのモニター画面で同時に複数拠点のドローン映像を映しました。

車載型モニター

ドローンからの誘導案内の様子

飛行中のドローンから避難誘導を受け、指定された場所へ避難する訓練を実施しました。工学院大学からドローンに搭載したスピーカーを経由して、滞留者への移動指示を出すことができます。音声は非常にクリアで聞き取りやすく、スムーズな移動ができました。数年間の実験の積み重ねで、精度の高い結果が得られました。

また、災害時の天候やドローン発着が可能な状況かどうかを判断するために、気象センターを用いたリアルタイムモニタリングのシステムを取り入れました。風量を計測して見える化し、特定の地点のビル風なども予測できるシステムです。

実証実験を行うための機器

このシステムを構築するために、多くの製品が使われています。
映像を複数拠点に伝送するための、エンコーダー/デコーダー(映像をアナログ⇔デジタルへ変換する装置)、IP電話の音声をドローンのスピーカーから発信するための音声交換装置、ドローンパイロットへ指示を出すためのTV会議システムなど。

理経の役割は?

ドローンで撮影された映像を複数拠点に伝送するため、4.9GHz帯の長距離無線LANを用いています。新宿中央公園⇔工学院大学⇔新宿区役所の拠点間を長距離無線通信で結び、災害情報を共有するという役割を担っています。今回は災害時もインターネットにアクセスできるようにするために、衛星回線も準備しました。また、新しいシステムが追加される際の構成をどうするかなど、ネットワーク全般を担当しています。
本実証実験はNHKをはじめ民放各社の番組でも取り上げられ、理経も番組のインタビューを受けています。メディアではドローンそのものに焦点が当てられることが多いのですが、ネットワーク構築やインフラの整備など、縁の下の力持ちとして重要な役割を担っています。

4.9GHz長距離無線LAN

実験を終えて

長距離無線LANでの伝送も、ドローンの飛翔も滞りなく進みました。今回、新宿区災害対策本部訓練とも連携し、リアルタイムでドローンの映像を共有・指示を出すなど、実運用段階へまた一歩近づいたと考えています。これだけ多くの会社が各社の得意分野を持ち寄ってシステムを構築するのは、たいへんユニークな試みだと思います。
このように複雑なシステムを自治体で導入いただくには、現場に駆けつけ、電源を入れ、ケーブルを接続すれば稼働する。というような単純なステップで運用できるのが理想で、既に保有しているシステムと重複することなく、補完する仕組みを提供できればと思っています。将来的には4.9GHzの長距離無線も含めて、本システムを多くの自治体で活用いただければと思います。

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