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理経メールマガジン
(2023.3.31 掲載)
25「再生可能エネルギー」
このコーナーでは「いまさら聞けない業界用語」と題し、理経が取り扱う製品のなかから、今話題のキーワードについてご紹介します。
太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーは、石油や石炭、天然ガスなどの資源と異なり枯渇する心配がなく、また輸入に頼らず国内で生産ができるエネルギー源です。自然界に存在し、発電時にCO2をはじめとする温室効果ガスをほとんど排出しないことから、2050年カーボンニュートラル実現という大きな目標を目指す上でも注目されています。
今回は、再生可能エネルギーのメリットと、今後主力電源化を進める上で抱えている問題点およびその対策をご紹介します。
登場人物紹介
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えびちゃん
広報部入社7年目。知識豊富でちょっぴり強気な姉御肌。趣味はゴルフとお酒。
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まなぶくん
営業部入社3年目。好奇心旺盛で打たれ強い性格。自社製品について日々勉強中。趣味はマラソンとお酒。
先日お客さんとの打ち合わせで、再生可能エネルギー(再エネ)の話になったんですが、そんなにホットな話題でしたっけ?よく分からないから「ぼくもそう思います!」で乗り切りました(笑)
それで乗り切れるのはある意味才能といえるわね。
2050年のカーボンニュートラルという大きな目標に向けて、再エネの一つである太陽光発電の導入量は日本国内でも年々増加しているの。
CO2排出量の削減には、従来の化石燃料からの脱却が不可欠だから、今後も太陽光発電の設置件数はますます増えていくと思うわ。
そういえば、久しぶりに地方出張に行ったら、太陽光発電のパネルがついているお宅がたくさんあったなぁ。
今までの発電方法は火力、水力、原子力で、今後導入が進む再エネは太陽光、風力などによる発電のことですよね!
よくできました!でも、再エネの発電量を増やすうえで、二つ問題が出てきたの。
一つは、再エネの発電所を新規で運営する際に、発電した電気を消費地域に送り届けるために電力会社の送電網に連系する必要があるのだけど、電力系統側の空き容量が不足しているのよ。
でんりょくけいとう?????
電力系統とは、ひとことで言うと、電気を各地へ送るためのシステムのことね。
発電所で作った電気は、電力系統を通じて各家庭や会社、工場などに送られるんだけど、電力系統の電気を送る能力には上限があるのよ。
つまり、許容量を超える電気を流そうとすると、キャパオーバーになってしまって、電力系統が壊れてしまうの。そうなると、停電やブラックアウト(※)などの障害が起きてしまうわ。
※ブラックアウト:大手電力会社の管轄する地域のすべてで停電が起こる現象(全域停電)。
それじゃ、せっかく再エネでたくさん発電しても、電力系統に渡せない電気はロスになるってこと?もったいないなぁ。。。
そうならないために、電力会社はさまざまな工夫をしているのよ。
そもそも発電所が何らかの理由で一時的に稼働しないことも考えられるし、天候によっても発電量は変化するものなのよ。24時間365日、発電所が出力最大量の発電を続けるなんてことはまずありえなくて、送電網を流れる電気の量は常に変動しているの。
うーん、聞いてるだけでめまいがする(汗)電気が当たり前に使えるのってすごいことなんだなぁ。。。具体的にはどんな対策をとっているんだろう?
系統へのつなぎ方には、従来の送電網で使われている「ファーム型接続」と、2021年1月から全国で始まった「ノンファーム型接続」の2種類があって、「ファーム型接続」では送電できる電気容量は固定なんだけど、「ノンファーム型接続」では容量に空きがあれば送電網に電気を流せるの。こうすることで、より多くの発電所が送電網を活用できるようになって、再エネのさらなる普及が期待できるわけね。
隙間商売、ですね?
ちょっと、違うような気がするけど。。
二つ目の問題は、再エネの太陽光発電や風力発電が増加する一方で、火力発電など従来の発電方式での発電量が減少する場合に、安定的に電気を送れるか技術的な課題がでてきたのよ。
えっ、どういうことですか?カーボンニュートラルに向けて化石燃料からの脱却を図るんだから、CO2を排出する火力発電が減るなら問題ないんじゃないですか?
CO2の排出を減らすというメリットは確かにあるんだけど、一方で火力発電は安定的な電力供給の実現に寄与していた側面もあるの。まず、電力の安定供給には需要と供給が一致する必要があるのよ。でも、再エネは火力発電と比べて発電量のコントロールがとても難しいの。例えば猛暑や寒波のとき「電力供給がひっ迫しているから、節電を」なんてニュースを聞いたことはない?そんな風に季節や天候、一日の中でも再エネの発電量は変動するから、需給バランスを保つのは大変なの。
再エネってCO2も出さないし、良いこと尽くしじゃん!って思ってたけど、従来の発電方法と一緒に使うのは骨が折れそうだね。。。
そうね。火力発電が再エネの変動を相殺する形で発電量をコントロールしていたから、需給バランスが保たれて電力の安定供給ができていたの。その縁の下の力持ちとしての火力発電の割合が減ってしまうと、安定供給に影響が出てしまうのよ。
えっ、それはまずいじゃないですか?どうなるんですか、これから。。。
安心して。火力発電が減っても大丈夫なように、需給バランスを保つための仕組みが新しく構築されているのよ。「需給調整市場」や「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス」といったキーワードで調べてみるといいわよ。
そうなんですね。じゃあ、何の問題もないってことじゃないですか。脅かさないでくださいよ。
残念ながら、何の問題もないってことはないのよ。需給バランスの問題とは別に、火力発電の容量が減ると電力系統の安定性が低下する、という問題があるの。
ざっくりと言うとね、火力発電が減ると、電気の品質ともいわれる周波数が変動しやすくなるの。周波数の少しの揺れが大きな揺れになり、歯止めがかからない状態になってしまうのよ。
じゃあどうすれば。。。
再エネの導入がさらに進んで、火力発電の発電量が減った場合を想定し、電力系統にパワーエレクトロニクスを用いた電力制御機器を設置して、周波数や電圧の状態を制御する必要があるの。
でも複雑な電力系統に、実際の環境で電力制御機器を闇雲に配置して稼働させるのは危険でしょ。だから事前にシミュレーションをするのよ。
それなら安心だね!それにしても、こんなに難しくて、しかも理経がカバーしてない分野も詳しいなんて、さすが先輩!
自社の製品ぐらい把握しておいてよね…(汗)
理経で取り扱う「PSCAD」がまさにこのためのシミュレーションソフトなのよ。
「PSCAD」は大規模な電力ネットワークのシミュレーションが可能で、高速で精度も高いと言われているわ。
独り勝ちだね!これは幸先がいいや!
でも、電力系統の管理が複雑だとすると、使い慣れたシミュレーションソフトから入れ替えよう、とはなかなかなりそうもないんじゃ。。。
何が幸先なの???でも、良い視点ね。
「PSCAD」はPSS/EやPowerFactoryといった他社のデータファイルタイプを直接PSCADのデータフォーマットに変換できるようにもしているのよ。
だから、ソフトの変更にも柔軟に対応できるわ。
詳しくは理経のホームページを見てね。
ぼくに理解できるかな?
注目の分野なんだから、がんばって勉強しなきゃダメよ。
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