PSTI 社「光ファイバ製品」

(2023.3.31 掲載)

データ増加にひっ迫するデータセンターの
省エネ・省スペース化に有効
フォトニクスサイエンステクノロジー(PSTI) 社「光ファイバ製品」

昨今、企業による自社サーバからクラウドへのデータ移行や、ビッグデータの収集・AI技術の進化、コロナ禍によるネット通販の利用急増など、あらゆる分野でデータ通信量は増え続けています。そんななか、重要な社会インフラの一つとなっているのがデータセンターです。今後も自動運転や遠隔医療、工場のIoT化、メタバースの台頭などによりデータ処理はさらに増えることが見込まれており、データセンターの大型化とともに機器の小型化、低消費電力の要求が高まっています。

データ処理をする回路基板の省電力化に有効な光ファイバ

通信量の増大による消費電力省力化の要求を実現するには、通信の処理技術を効率化することが非常に重要で、そのためには光ファイバの光伝送技術が不可欠です。
現状の光ファイバは、もともと光通信が設計される際、光ファイバの最小サイズが125μm(マイクロメートル)というサイズに限定されていたため、これを受ける光トランシーバーをはじめ、導波路(※1)と呼ばれるシリコンフォトニクス回路(※2)の受け口のサイズも125μmに統一されています。そのため、処理能力の増加に比例して、サーバの回路基板に設置される光ファイバコネクタのスペースも自ずと増えていき、回路基板を作動させる電力も同様に増え続けているという課題を抱えています。

そのような中、理経が取り扱うPSTI社の提案は、ファイバそのものを細くし、回路基板上のスペースを空け、より多くの通信を可能にするというものです。つまり、125μmで1本のファイバであった条件をくつがえし

①1本の細いファイバ4~8本をまとめ、125μmサイズの1本に束ねる
②エネルギー損失を低く抑える

という点を実現する技術であるわけです。
2022年の発表時点で上記二つは確認されており、2023年春には調心(※3)を含めた導波路との接続テスト結果を発表できる予定です。

※1 導波路:光学的な特性をもつ物質で作成された、通信に光を用いる伝送路。
※2 シリコンフォトニクス回路:シリコン基板上に発光素子や受光器、光変調器といった素子を集積する回路
※3 調心:2本の光ファイバ同士を接着させること。

DMCF(ダブル・マルチコア光ファイバ)の技術

PSTI社の光ファイバの技術の強み

光ファイバにはガラス製とプラスチック製があり、ガラス製の光ファイバは、通信速度の効率化により優位性があります。
PSTI社はこのガラス製光ファイバの加工技術に特化しています。主材料となるガラスの作成から手掛け、最先端の光技術と高度なガラス加工技術を組み合わせ、光ファイバや光ファイバを用いたデバイスの設計・開発・製造までを自社で行えます。お客様の望むオリジナル光ファイバの提供はもちろん、デバイスもカスタムメイドで作成が可能です。
光ファイバを加工する会社、光デバイスの組立を行う会社は他にもありますが、それらをトータルで設計・開発・製造が行える会社は他にありません。

ガラス加工の原理は、筒を吹いて先を膨らませたり、引っ張ったり、細くしたりと、一般にイメージされるものと同じですが、光ファイバを作るためには専用の「線引き装置」というものを使用します。装置とは言いながらもこれを操れるメーカーは希少です。
また、石英(ケイ素)ガラスのコントロールに関して知見が豊富であることは、現在課題になっている電力やデータセンターのひっ迫などを解決する手段につながる可能性があること、そして世の中にないオンリーワンの製品を提供できる点がPSTIの強みとなります。

「ダブル・マルチコア光ファイバ」の研究・事業化に向けて

2020年、中小企業庁が担当する令和2年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)の採択事業として、同じ大きさのファイバで、従来のおよそ4~8倍の伝送能力を持たせる「ダブル・マルチコア光ファイバ」の研究・事業開発が取り上げられました。理経はこのプロジェクトの事業化部会の幹事会社として関わっており、データ処理のひっ迫したサーバ内の改革を行うことを目的に、製品を開発し事業化に参画します。
理経は、新たに設立した千歳・恵庭営業所と連携を強め、PSTI社の微細なファイバの生産工程をサポートすることで、今後開発研究から工業製品としての成立を示して事業につなげていきます。

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